2019年5月1日水曜日

『将軍の栄光』作戦元ネタ解説(番外編・バルジの戦い)

 お久しぶりです。今回も『将軍の栄光』のステージ元ネタ解説を…と思ったら、何と西部戦線で残っているのはあと一つ、『第三帝国の運命』だけでした。このステージは連合軍総出でベルリンを落とすという、まさに最終決戦という感じのシナリオになっているんですが、実は史実だとベルリン周辺に攻め込んだのはソ連だけなんですよね。しかもベルリン市街戦はゲリラ的な戦いなので、元ネタ解説というほどのものでもないな、と。

 そこで、いっその事、西部戦線末期の大まかな動きを書いてしまおうと思い至りました。で、折角なので映画にもなった「バルジの戦い」も解説したいと思います。言わば番外編ですね。
 ※基本的にはWikipediaの内容が大部分です。ただコピペではあまりに芸が無いので出来る限り平易かつ自分の言葉で解説させて頂こうかと思います。

 さて、前回のマーケットガーデン作戦からおよそ3ヶ月。西部戦線はいよいよドイツ本土に達し、ソ連軍もポーランドへと押し寄せ、ドイツはもう占領を待つばかり、といった状態でした。
 しかし、一方で連合軍はマーケットガーデンの失敗もあって侵攻が停滞、ソ連軍も大攻勢が一段落ついたところです。対するドイツは本国が近づいた事で素早い対応が可能になり、まさしく反撃の好機にありました。

 そんな中、総統ヒトラーが強く主張したのがこのバルジの戦い、正式名「ラインの守り作戦」でした。ちなみに、東部戦線は広すぎて一部の反撃に成功したところで趨勢に影響しない、という理由で却下。
このラインの守り作戦の目的は、一言で言えば「フランス侵攻の再現」です。ベルギーにあるアルデンヌの森を通過して、連合軍の補給路を断ってダンケルクで孤立させた、あれです。

この作戦でも、アルデンヌから突入し、電撃的に進軍してアントワープを奪取し退路と補給路を断ち、北部方面軍を孤立させ侵攻を頓挫させて、これを以って英米の戦意を挫き、講和を結ぶという大胆な計画を立てていました。


 事実、森林地帯で装甲部隊が通る事も無いアルデンヌ地方ではほとんど戦闘も無く、担当のアメリカ軍でも休養地、再編成の場と化していますから、あながち的外れな計画とも言えません。
また、連合軍はこれまで無線を傍受してドイツ軍の動きを読んでいたのですが、それに気付いたドイツ軍がこの頃には書面に切り替えていたので、それが出来なくなってしまっていました。おまけにそれを「ドイツ軍はもう組織的抵抗が出来ない」と勘違いしてしまったのです。


 この作戦の最大の障害は何と言っても戦力が足りない事でした。が、傷病兵、志願兵、少年兵、などなど、ドイツ軍はなりふり構わず兵を搔き集めました。工場もフル稼働し、内外が予想したよりも多くの戦力を整える事に成功したのです。
とは言え、フランス侵攻の時と違って制空権を完全に連合軍が握っている事と、兵力の面で圧倒的にドイツが劣っているという事実に変わりはありません。

それに加え、燃料が足りないので連合軍から奪うしかなく、迅速に補給基地を奪取出来なければ敵の増援に捕まり壊滅させられてしまうという危険をはらんだ楽観的な作戦であるというのも否めない点ではあります。

という訳で、ドイツ軍将校も作戦の実行に反対でした。が、それは総統ヒトラーと作戦本部に受け入れられず、とうとう作戦は実行に移される事になりました。

 1944年12月16日、爆撃機を飛ばせない悪天候の中、ドイツ軍はアルデンヌの森を通ってアメリカ軍を急襲します。突然の奇襲、それも電線切断などの妨害もあり、アメリカ軍の各部隊は全体像も分らぬまま必死の防衛を強いられます。その抵抗は予想外に激しく、あっさりと侵入した地点もありましたが、そうでない地点もいくつか存在していました。

 連合軍の対応も早く、最初こそ陽動を疑っていたアメリカ軍でしたが、各国首脳に相談する事無く予備部隊を急行させるなど、ドイツ軍の予想より早い対処が為されました。
指揮系統整理の為に北部のアメリカ軍をいったんモントゴメリー将軍の指揮下に置くという、国に拘らない柔軟さも見せています。


 続々と現れる救援と激戦を続け、ドイツ軍の作戦は遅延を続けます。

 作戦中で最も有名なエピソードが「グライフ作戦」でしょう。アメリカ軍の軍服を着るなどの偽装をした部隊が、アメリカ軍陣地に潜入して看板の向きを変えたり、偽情報を流したりといった妨害工作を行った作戦です。もちろん条約違反ですが、まあ今更ですね。
 これのせいでアイゼンハワー将軍が暗殺を防ぐために軟禁状態にされたり、ブラッドレー将軍が「イリノイ州の州都」という質問に「スプリングフィールド(正解)」と答えたのに兵がシカゴだと勘違いしていた為に勾留されたり、モントゴメリー将軍が監禁されて激怒したりというエピソードが生まれました。

 それともう一つ。バストーニュ周辺の攻防戦です。ここは7本の道路が交わる交通の要衝であり、絶対に落とさなければならない地点でした。圧倒的な兵力差にも関わらず、アメリカ軍は抵抗を続けます。そしてドイツ軍がやっとバストーニュを包囲し、降伏勧告を行った時のマコーリフ将軍(師団長代理)の答えが「NUTS!」という非常に有名なセリフです。意味は「ふざけるな」又は「地獄に落ちろ」という感じだそうです。
宇宙戦艦ヤマトで沖田艦長が降伏勧告に「馬鹿め」と言うのは十中八九これが元ネタでしょう。
バストーニュは結局占領できず、本隊が先に西進するという決定がされました。

ですが、ドイツ軍の進軍はこれまででした。12月下旬には天候が回復し、爆撃機が再びドイツ軍を襲います。また、燃料も枯渇した所に連合軍の本隊が集結。ドイツ軍は次々と撃破され、退却していきます。
この際、前線が部分的に突出した形(バルジ)になったため、この戦いはバルジの戦いと呼ばれるようになりました。
結局ドイツ軍の到達地点は最大でも半分ほどでしたが、それも全て押し戻され、ドイツ軍最後の反撃は失敗に終わりました。


 マーケット・ガーデン作戦とは「時間が勝負の奇襲作戦」という意味で共通点があり、双方ともにウォーゲームの舞台によく使われます。そういえばどっちも映画にもなってますね。
しかし、なぜか『将軍の栄光』ではシナリオに採用されていません。なぜでしょうか・・・。


 実は平成のうちに更新したかったのですが、ギリ間に合いませんでした。
それでは、令和になっても「暇じゃないけど暇つぶし」をどうぞよろしくお願い申し上げます。