2023年2月23日木曜日

奇ゲー「プラネットライカ」のストーリーなど

  どうも。前回に引き続き奇ゲーのご紹介です。と言っても未プレイなんですが。

 今回は「プラネットライカ」というプレステのゲーム。

AMAZONより。ロケットが切れているのはこういうデザインです。

 こちら、同じく奇ゲーとして名高い「クーロンズゲート」の開発元によって企画されたロールプレイングゲームなのですが、その評価はと言えば、
ストーリーが曖昧ではっきり説明されない、
しかも物語の根幹に主人公のトラウマが深く関わっており回想と現在とに話が飛びまくる、
そもそもキャラの台詞が独特過ぎて会話の大半が意味不明…。

 と、正直なところ高評価ばかりとは言えません。かくいう自分も、初めて見た時は「訳わからん」以外の感想が出てきませんでした。


 ですが、夢の中のようなセンチメンタルかつダークな雰囲気、
見え隠れする奥深い設定、特徴的なキャラクター達に魅せられた人達がいるのも事実。

 そんな訳で、今回はちょっとばかしストーリー、用語、キャラクターの簡単な説明をしたいと思います。



〇あらすじ


 まずは例によってあらすじから。
 舞台は近未来。かつて人類は火星人と接触し、友好の証として自らの顔を火星人に譲り渡す「顔の契約」を結び、それ以来人類はみな犬の顔になりました。(ついでに尻尾も生えました)
 しかし火星人は顔を手に入れた事が祟ったのか、程なく滅亡。契約の証拠として火星人がかれらの母星に残した人面岩「ザ・フェイス」だけが、ただひとつ現存する人の顔となってしまいます。

火星の人面岩
一時期話題になった、火星地表の人面(に見える)岩。(wikipediaより)
(NASA/JPL/University of ArizonaUser:Anton (rp) 2005 - Image:Martian face viking.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=75311による)

 やがて火星は罪人の流刑地として利用されるようになり、さらに時を経て彼らがコロニーを築いたところで、話は始まります。


 火星はいま、再始動した地球化計画の舞台となっていました。
しかし火星は、邪念を引き起こし妄想をかきたてる「イーブルマインド」と呼ばれる邪気を秘めています。
また10年前の計画の際に送り込まれた先遣隊は、隊長ガリル大佐の
『神は死んだ、光の私』
というメッセージを最後に音信不通に陥り、それ以来化物や終末の噂が出回っていました。

 そんな状況下で、主人公ライカを含む調査団(たった4人ですが)は火星が安全であるという報告を上げる為、火星へと向かうよう命じられます。

 そして、クリスマスを迎える頃。火星に着陸しようとしたロケットは、さっそくイーブルマインドの洗礼を受けようとしていたのでした・・・。



 どうでしょうか?「顔の契約」や「クリスマス」という言葉の響き、なんだかワクワクしませんか?ちなみに、ここまではまだ非常に分かりやすい部分です。




〇登場人物


・ライカ

 このゲームの主人公で、宇宙航空隊の新人無線技士です。

 普段は自他共に「ライカ」で通していますが、これはニックネームです。
本名はプレイヤーが入力した名前になるものの、ロシアっぽく語尾に「~ノフ」が付くので、意識しない限り変な名前になってしまいます。イチロウノフとか。

 作中でも特に寡黙な人物として描かれており、「はい/いいえ」みたいな選択肢くらいしか喋りません。古風なRPG的主人公ですね。

 そして最大の特徴が、3人の人格を持つ多重人格者であるという点。
ゲーム中はこの人格を切り替えながら進めていくことになります。(後述)


 ちなみに、キャラクター名の由来は多分宇宙犬ライカでしょうね。詳しく知らない人の為に簡単に説明すると、実験の為に宇宙に打ち上げられたソ連のワンちゃんです。クドリャフカという名前の方が有名らしいです。

・タトラー

 宇宙船の船長であり、調査団のリーダーです。
 最も年配なのですが、ちょっとした事でイライラするような言動が多いです。責任感の裏返しですかね。


・ヌーン

 ロケットの機関士で、粗暴かつ陰険な言動の目立つ古参隊員です。
 イーブルマインドの影響も隊内で最も顕著です。洋画でよくいるいじめっ子って感じですね。
ただ、着陸後の調査でも重要な案内役を任されており、結構実務では重宝な人物かもしれません。


・エイプリル

 若き地質学者にして、本作のヒロインです。優しい。
 犬の顔という難しい造形にも関わらず、当時としてみればかなり美人なグラフィックだと思います。


・ガリル大佐

 10年前に音信不通となった先遣隊のリーダーです。現在の生死は不明。
物語の謎に深く関わっているようです。


・コロニーの人々

 現在の火星の住人です。その出自は流刑者および密航者たち。コロニーも元刑務所です。
「酸素屋」ヘロデらを中心に、恐らく独力でコロニーを営むタフな人々です。
地球化計画の上では重要な存在ですが、その過去から地球人、特にライカ達のような刑務官・警察官を想起させる制服を着た存在には敵対的です。



〇三悪

 イーブルマインドが引き起こす邪念には3種類あり、それぞれ
力悪・アニマル系
知悪・サイコ系
欲悪・ビジュアル系
と呼ばれます。
 当然ながら、火星の住人はみなこのいずれかの悪に支配されています。


 そして多重人格者であるライカの人格もまたこの三悪に対応しており、ひとつの邪念が溜まり続けるとそれぞれの人格が表に現れる(顔、髪色、体格まで変化します)「人格変容」を引き起こします。
 ちなみに、ライカはこれらの人格については全く知らないようです。


・アニマル系

 思い通りにならないと力に訴える、直情的で暴力的な悪です。
 主に酒場『ナイトプラネット』に出入りする住民がこの悪に支配されています。

 対応する人格は「アーネスト」。
彼が表出すると髪が赤く変色し、体格も筋骨隆々として特定の障害物を破壊できるようになります。やはり荒っぽい性格ではあるものの、そこまで野蛮ではないという印象です。
これは他の人格も同様で、どの人格も住民ほどには歪んではいません。っていうか同レベルだったら話が進まない。

・サイコ系

 自らの知性に酔い、思想・・・というか妄想の正しさを妄信し、理解を示さない他者を蔑む悪です。
 主に金星人に救済を求める『サイコハウス』の人々がこの悪に支配されています。イメージとしてはカルト信仰ですかね。
個人的には三悪の中で最も会話の内容が支離滅裂だと感じます。会話というより自問自答か演説に近く、質問にも一人で納得したり考えたりするばかりでまともな受け答えは期待できません。

 対応する人格は「スペーサー」。
青髪で猫背の人格です。火星人が残した扉を通れるという特長を持ちます。
また意外と社交性が高く、知能も高いので何言ってるか分からんサイコ系住民からも情報収集を行えたりします。
 三人格の司令塔でもあり、ライカが見聞きした事もよく記憶しています(他の人格は断片的にしか認識できないようです)ので、ストーリー上の役割も比較的大きいです。


・ビジュアル系

 外見(ヴィジュアル)=美しさに固執し、整形を繰り返す悪です。
 それって悪なの?と思われるかと思います(ゲーム中でも突っ込まれます)が、要は虚栄心ということのようです。
作った顔の名前も『ヴァニティ(虚栄・うぬぼれ)フェイス』ですし。

 また、少なくとも火星においては「美=人の顔・醜=犬顔」を意味します。
そして同時に火星人滅亡の原因となった人の顔は禁忌ともされているらしいので、背徳的な誘惑に走ってしまった人々、という事でしょうか。
 しかも、それ程までに外見にこだわっているにも関わらず、(むしろだからこそ?)ビジュアル系住民は特に鏡を嫌うという傾向にあるようです。
自分のうぬぼれを壊さない為に真実から目を背けていると考えると、確かに不健全ではありますね。

 とは言え、火星に鏡が極端に少ないことや、作中の会話の雰囲気から、犬顔を嫌っているのはビジュアル系だけはないように感じます。整形に及ぶのがビジュアル系というだけで。

 さておき、そんな禁じられた手術を行う整形屋『リャンハウス』に出入りする住民がこの悪に支配されています。

 対応する人格は「ヨランダ」。
金髪の女性人格です。ハッキリと物を言う姉御肌という感じの人物です。
ゲーム的特徴としては、謎の人物があちこちに残したメッセージ(顔?)を受信することができるという能力を持ちます。


※人格変容のルール
 前述の通り、主人公ライカは住民達と接触する度に悪が溜まっていき、やがて人格変容が発生します。
 が、その溜まり方がちょっと素直じゃありません。

 アニマル系住民と会話→サイコ系悪が溜まる
 サイコ系住民と会話→ビジュアル系悪が溜まる
 ビジュアル系住民と会話→アニマル系悪が溜まる
 …と言う風に、三すくみの要領で悪が溜まるのです。




〇終末と5つの預言(若干ネタバレあり)


 おお、何かファンタジックな見出し。

 前述の通り、火星には終末的雰囲気が蔓延しています。
火星の人々は酒に溺れたり、金星人に救いを求めたり、整形によって自信を付けたりする事で精神を安定させています。

 その元凶ともいえるのが、先遣隊の生き残り「メディスンマン」達から教えてもらえる『黒い騎士の噂』と『エレミヤの預言』です。

 初めに聞かされるのは、前者の
「黒い騎士が各地で悪を集めており、それが完全な悪となったとき、世界が終わる」という火星で広まっている噂についてです。

 しかしその後、流刑者エレミヤが残したという
「完全なる善と完全なる悪が出会うとき、世界は再生される」という5つの預言と共に、
黒い騎士もこの預言の一部だと教えられるのです。

 ひとまず成り行き上、この預言を集めていくことが当面の目的となっていきます。

 ところで、エレミヤだとか預言だとか終末の騎士だとか、かなりキリスト教に関連するワードが出て来ている事にお気付きかと思われます。
考えてみればクリスマスもそうですね。

 キリスト教に詳しければもっとより深くストーリーを理解できるのかもしれません。




 とりあえず、今回はこんなところですね。
 それでは。