2024年2月3日土曜日

フランス革命の流れ(最終回・統領政府設立まで)

 さて、フランス革命、ついに最終回。

 こっからはひじょ~にややこしいので、これまで以上にニュアンスで行きます。
詳細な説明となると知識的にも文章量的にもキャパオーバーなので、良ければ専門のサイトへどうぞ(責任放棄)。


 国民公会の構成は前回説明した通り、山岳派・ジロンド派・中間層でした。
そして最初に主導権を握ったのはジロンド派です。ただしそれは中間層が彼らについたからであって、単独過半数はどちらも取れていません。
ついでに言うと、ジロンド派はこの頃からジャコバンクラブを脱退していますので、ようやく「ジャコバン派」≒山岳派と呼べるようになります。


 さて、共和国となったフランスの目下の問題といえば、もちろんフランス革命戦争です。
ルイ16世の処刑により諸外国は一斉に警戒を強め、講話どころかイギリス、オランダ、スペイン、イタリアと次々に戦争へ突入します。これが第一回対仏大同盟ですね。

 ヴァルミーの戦いで一度は勢いに乗ったものの、長引く戦争はフランスに様々な問題を引き起こしていました。

 まずは商人の買い占め、物資不足、不換紙幣の信用低下による物価の高騰。
戦争の長期化による兵役満了・兵力不足、士気の低下、そして戦況の悪化。
徴兵や革命に反感を持った地方の反乱に、極めつけは最高位の指揮官デュムーリエ将軍の反乱未遂。

 それらの失態や国王裁判・立法への消極的姿勢から、(立法議会時代から支持を失いつつあった)議会でのジロンド派の立場は悪化し、中間層が山岳派についたことで形成は逆転します。

 ジロンド派も山岳派を攻撃し逮捕や暗殺さえしますが、決定打にはならず。ロベスピエールが促した民衆蜂起により議会は国民衛兵に囲まれ、ジロンド派議員は逮捕されてしまうのでした。
ただし、地方によってはジロンド派が強い地域もあり、分断は続きます。


 主導権を握った山岳派は、内閣はもちろんのこと、強い統制を敷くための「委員会」と呼ばれる組織で幅を利かせます。
行政権を有する「公安委員会」、警察権を有する「保安委員会」が有名です。

 彼らは、少し時系列は前後しますが、民衆の圧力を背景に彼らの求める立法、例えば買い占め禁止令や最高価格の法定、反革命容疑者の取り締まり強化などを行っていきました。

 そしてその中で、国民公会は「恐怖政治」の採択を宣言します。
平時の手続きや理念を逸脱して、「怪しい奴」の捕縛・処罰(処刑)、強権的政策を合法化した訳です。
戦時下という緊迫した状況を立て直すという名目なので、今でいう非常事態宣言のような感覚だったのでしょうか。

 イメージと違ったのですが、これは民衆が議会を包囲して要求したもので、むしろ彼らに求められたものだったようです。最初はね。


 恐怖政治の中、反革命容疑者の杜撰な処刑や食糧徴発が行われます。それはパリに留まらずフランス全土に及び、多くの人がギロチンにかけられていくのでした。

通常よりもかなり簡易な手続きでしたから、恐らくでっち上げや私怨によるものも相当数いたでしょう。
※ギロチンの犠牲になった有名な人物一覧
・マリー・アントワネット(言わずと知れた王妃)
・シャルロット・コルデー(上記の、山岳派を暗殺した女性。『暗殺の天使』という嘘のような異名で有名)
・ブリソー(ジロンド派の指導者)
・オルレアン公フィリップ2世(ルイ16世のいとこ。王権を狙う野心的な人物で、なおかつ三部会を要求した貴族たちの代表格)
・デムーラン(バスティーユ襲撃の引き金となったとされる人物)
・ダントン/エベール(山岳派の穏健派/過激派(後述)の代表格)
・ラヴォアジエ(超有名な質量保存法則の発見者)

 しかし一方で彼らの強権的な政策は少なくとも一定の成果はあったようで、物価高騰や食糧不足は改善し、人々の生活も落ち着きました。

 更に軍備・軍制の整備と、新兵であった義勇兵たちも経験を積んだこと、それから新戦術や才能主義(にならざるを得なかった)人事なども功を奏します。
ナポレオンを筆頭とした名将が活躍し、フランス軍はなんと対仏大同盟を敗走させたのでした。

 ということは、戦時体制である恐怖政治はもはや無用であるとも思えます。
ところがその緩みは、ジャコバン派の瓦解を意味しました。


 実は、ロベスピエールに忠実な人間の数はそう多くありませんでした。
かつての立法議会と同様に、ジャコバン派もまた穏健派・過激派に分かれていたのです。

 恐怖政治の中で行われた安易な処刑、そして敵対者への弾圧と処刑(自業自得な面もありましたが)は中間層はもちろん、ジャコバン派の内部にもかなりの反感を抱かせていました。

 ついでに言えば、戦時体制での経済政策も決して万能ではありません。
例えば最高価格令について言えば、軍需工場の賃金は平時よりも下がっていたそうですし、良品は闇市に流され粗悪品が流通していたとか。

 そんな訳で、ロベスピエールの内外での人気はだんだんと落ちていったようです。
総じて言えば国内が安定したことで、強権的なやり方への不満を感じる余裕ができてしまっていた、ということでしょうか。


 そして極めつけが、反革命容疑者の財産没収と貧困層への分配を試みたこと。
その対象になるかも知れないという(色んな意味でもっともな)恐れを抱いた議員たちは、軍隊を議場に引き込み、彼らを逮捕・処刑したのでした。
テルミドール(熱月)の反動」という世界史上でも一二を争うカッコイイ名前で知られるこの事件により、恐怖政治は終焉。

 以降、大体の制度は8月10日のクーデター以前に戻され、ジャコバン派は以前の敵対者と同じように弾圧・処刑されることとなります。


 一般的にはここまでがフランス革命だそうで。こっからは大まかな流れだけ羅列します。

 それから間もなく「共和国憲法」が制定され、制限選挙による議院の結成と「総裁政府」(内閣)が成立します。
これまでとは違う、権力分立による議院内閣制(=議院の同意の下でなければ内閣が存在できない)なのが特徴です。

 それからも物価高騰などによる民衆の暴動が起きますが、もはや基礎となる国民衛兵も指導者も無く、軍隊により呆気なく鎮圧されました。
以降、民衆がこれまでのような大きな役割を果たすことはなくなります。
結局、最後まで貧農に土地が分けられることはありませんでしたね。

 とは言え総裁政府内でも権力争いによるクーデターが度々起きるなど、まるで安定しませんでした。
やがて「ブリュメール(霧月)18日のクーデター」が勃発し、議会は軍隊に制圧され、政府は解散。三人の統領をトップとする「統領政府」が誕生しました。

 そして何を隠そうその一人が、戦功により絶大な人気を誇り、それ故に議会から疎まれていたナポレオン将軍。
彼は第一統領として権力を集め、独裁そしてナポレオン帝政を樹立するのですが…それはまた別のお話。


〇感想

 いやー、長かったですね。期間にしてたったの5年ほどとは信じられません。
色々はしょった部分や逆に詳細過ぎる部分があったと思いますが、勘弁してください。

 個人的には、調べる中で今の日本の基礎になった理念や制度が次々に出て来てけっこう面白かったです。

 最終的には悲劇的な結末に至ってしまってはいますが、それも一連の情勢がドミノ倒しのように派生した結果であり、「こうすれば防げた」と言い切れない、宿命・運命的なものを感じました。


 本説明ではルイ16世、ラ・ファイエット、ロベスピエールくらいしか人名を言及しませんでしたが、彼ら以外にも重要な役割を果たした人はまだまだたくさんいます。
ただ、彼らの行動や思想を説明し始めると余りにも複雑になるため割愛させて頂きました。

 よくこういった解説で「この人物は××派だから△△層に肯定的で~」といった説明をされますが、少なくとも僕にはそんな簡単なまとめ方は不可能です。
知識不足もそうですが、あんまりザックリ語ってしまうと失礼な気がして。

 興味があれば、誰か一人に着目して調べるのも面白いでしょうね。当時の彼らの信念や野心や恐怖が伺えるかもしれません。


 また、フランス革命を「愚民の暴動」とする説明もよく見かけますが、誤りでした。

 重要な役割を果たしていたのは確かですが、実の所これまで見たように、方向を決めていたのは貴族・ブルジョア・ジャコバン派でした。
中でもブルジョアは最終的に自らの目的(共和制かつ富の維持)、このことからフランス革命はブルジョア革命ともされているらしいです。

 まあ、私刑みたいなヒステリックな事件が多かったのも事実です。
情報も知識も経験も余裕も無く、この大事件を冷静に乗り切れという方が酷なような気もしますが。

 でも、多分ですが、現代人でも似たような行動に走ることは十分あり得るのではないでしょうか?流石に斬首はしないでしょうけどね。


 何はともあれ、今シリーズはこれにておしまいです。長々とお付き合い頂きありがとうございました。
それでは。

2024年1月20日土曜日

フランス革命の流れ(その3・ルイ16世の処刑まで)

 どうも。フランス革命、第三回です。
いよいよ貴族からブルジョアの手に主導権が移り始めましたね。


 さて、新たに成立した立法議会において、議員の中に強硬な開戦論を主張する人々が現れます。
それがジャコバン・クラブの主導メンバー、後にジロンド派と呼ばれる面々です。(指導者の名からブリソー派とも)

 なぜこんな時期に・・・と思ってしまいますが、何しろ人数が多いですからね。理由も様々だったでしょう。
 例えば、
・王が外国と通じていると睨み(事実ですが)、干渉を排除するため。
・諸外国から革命を守り抜くため。
・戦争を通じて革命をヨーロッパ全土に広げるため。
・戦争によって潤う業界の人間だったため。
・これが最もありそうですが、愛国心を煽り(あわよくば勝利し)支持を集め、同時にフイヤン派を攻撃するため。
あたりでしょうか。

 というのも、フイヤン派は割と戦争に消極的でした。それもそのはず、当時は不作と財政改革の破綻、情勢不安により物価が上がり続けていたからです。
そこへ争乱が起これば、また民衆が行動を起こしかねません。
しかし一方で、もし戦争で成果を出せれば議会への支持を取り戻せるかもしれません。また彼らの中には軍事を担う貴族もいましたから、権力拡大を目論んで賛成した人ももちろんいたでしょう。

 そして国王はというと、もし勝てば国王の権威を取り戻せますし、負ければ革命勢力が弾圧されるだけ。
どちらに転んでも得しかありません。言わずもがな戦争賛成です。

 結果として、戦争に消極的なフイヤン派に属する大臣をジロンド派が「弱腰」と非難し、国王もフイヤン派大臣を罷免してジロンド派に組閣を命じ、
そして市民も外国(&彼らと繋がる貴族達)への恐怖や敵対心からそれを支持し…
と、反目している勢力それぞれの意図の下、戦争ムードが高まっていきます。

ちなみに、山岳派(急進共和派)の代表格、ロベスピエールは以外にも戦争に批判的でした。
革命を安定させるのが先だというのと、
万一勝利できたとしても武勲を立てた将軍が実権を握ってしまう危険があるというのが主な主張です。
後の恐怖政治やナポレオンの事を考えると興味深いですね。


 そんなこんなで、議会はオーストリアへ宣戦布告しました。

 ですが上述の通り、軍事は貴族の領分。多くの貴族が亡命した上、保守派(指揮官)と共和派で内部分裂しているフランス軍は案の定の連敗。
ついでに王や王妃は外国と通じており、当然情報も流れていました。

 戦況悪化の影響で、ジロンド派・フイヤン派の間で何度か政権交代が起こる中、議会は「祖国は危機にあり」宣言を発します。
要するに、フランス全土に義勇兵(志願兵)を募った訳ですね。これを機に、フランス兵の士気は向上していきます。

 ですがその頃、物価高と生活苦、迫り来る敵国への恐怖、政治からの隔絶によって溜まった議会への不満、民衆の意に抗うように拒否権を行使しているルイ16世への怒りなどなどにより、パリ市内は既に暴力革命の寸前とも言える状況でした。

 更に折悪く、外国の将軍がこの上なく威圧的な脅しを(王妃に頼まれて)布告します。
しかもそれがフランスの専制君主制を擁護する内容だったため、ルイ16世は完全に「敵の手先」と認識されてしまいました。

 そこへ救国の使命感に燃える義勇兵が集まる環境が作られた訳です。


 そして間もなく武装蜂起が勃発。
パリ市庁舎は制圧され、「蜂起コミューン」と呼ばれる組織がパリ自治政府に取って代わります。
更にその未明、テュイルリー宮殿が襲撃される8月10日事件が発生しました。

 義勇兵を先頭にした民衆に対し、宮殿を守る国民衛兵は多くが寝返り貴族は退却、踏み止まったスイス傭兵たちは大半が戦死。
その激戦を讃えるライオン記念碑(王家の盾を庇う獅子の像)はかなり有名なので見たことがある方も多いかもしれません。

 それに屈した議会は、王権の停止=共和制の採用や普通選挙による新議会(国民公会)の結成を宣言。国王一家は幽閉される事となったのでした。
ちなみに司令官として転戦していたラ・ファイエットはパリへ進撃して武力鎮圧を試みますが、兵士の抵抗により断念。逆にパリから狙われる立場となり、国外へと亡命します。
彼はこれ以降フランス革命から姿を消しますが、苦境に遭いながらもナポレオン帝政崩壊まで生き抜きました。

 その後、一部廃止だった封建特権が全面廃止になったり、疑心暗鬼になった民衆やコミューンが反革命容疑者を投獄・虐殺したりしました。
またこれら一連の中で、大きな指導力や人気を見せたのが皆さんご存知ロベスピエールです。詳しくは割愛。


 そしてそれから約1月後、かの有名なヴァルミーの戦いが起こります。
実を言うとこれはメインで紹介しようと思っていたのですが、調べてみると正直大した戦いではありませんでした。
それまでは士気も低く裏切りや撤退のあったフランス軍が、正規軍相手に互角の砲撃戦を演じたというもので、手強いと思った(かどうかは知りませんが)プロイセン軍が突撃もせず撤退してしまったので兵数の割に死者はさほどでもありません。

 ただその後、フランス軍は逆にドイツの重要都市を陥落しており、単なるまぐれでもなかったようですね。


 またそれとほぼ同日に、(今より制限は多いものの)普通選挙により国民公会が結成されました。
もちろんフイヤン派(立憲君主派)は一掃され、ジロンド派、山岳派と大多数の中間層(通称平原派)に分かれました。
これまでの流れから、山岳派が大多数じゃないの?と思われるかもしれませんが、実際は極端な思想の候補者は当選しませんでした。
間接選挙であったこと、貧困層は日雇い仕事のために選挙に行かなかったことなどが主原因だったそうです。

 彼らはルイ16世の処刑について長い討議を行い、他国との内通の露呈、民衆の圧力などにより小差で死刑が可決します。

 こうして、フランス最初の立憲君主は断頭台に掛けられたのでした。


 話はこれでおしまいになってもおかしくなさそうな所ですが、戦争はまだ終わっていません。
それどころかいわゆる対仏大同盟との戦いへと拡大を続け、それに伴い革命も更なる展開を迎えるのでした。

 今回は短めですが、話の区切りが良いのでここでいったん締めさせて頂きます。
それでは。


2024年1月13日土曜日

フランス革命の流れ(その2・立法議会結成まで)

 どうも。フランス革命の備忘的記録、第二回です。


 前回のヴェルサイユ行進により、国王ルイ16世一家と国民議会はパリへと連れて来られていました。

 またこの頃から種々の改革が本格的に始まります。ひとつひとつ説明するほど重要でも簡単でもないので省略しますが、
すごーーく大雑把に言うと、
①旧慣習の廃止と理論的な立法(聖職者の公務員化・教会財産の没収、行政区分の策定など)
②国内の安定化(一部税の廃止、国有財産の売却や①の没収財産による財政問題への対処など)
といったところでしょうか。意外とマトモですね(失礼)。
またユダヤ人や有色人種、女性の人権についての議論も活発になり、これから先いくつかの法律が定められます。

 そして、同時に③経済的自由化という政策も進められていました。

良いことのように思えるかもしれませんが、労働者の団結・争議が禁止されるなど、あまり手放しで喜べるものではありません
「経済活動の自由」や「所有権の不可侵」に熱心なのは、当時すでに土地やお金を得ていた層なのです。

 他にも、革新的な政策は、やがて内乱にまで発展する「国内分断」という副作用も引き起こしてしまいます。


 それはさておき、この時期、議会内外で意見や立場によるいくつかのグループが生まれました。
それを象徴するのが、議員以外でも参加可能な政治クラブの存在です。最も有名なのが「ジャコバン・クラブ」ですね。
ちなみにジャコバン・クラブは特定の思想を掲げたものではありませんので、この時期の中心メンバーは後に言うジャコバン派とは異なります。

 議員以外の人はもちろん、議員であってもこういった団体に参加し、討論を行っていたようです。議会の一部ではないのですが、政党の原型のような存在だったみたいですね。

 では折角ですので、この頃の派閥をまとめてみましょう。


 まず大まかな主張として、君主制を維持するか廃止するか。

 前者のうち、従来通りの専制君主制を主張するのが守旧派とか王党派とか言われます。
一方で、憲法制定、旧制度の改革を目指したのが立憲君主派
革命に参加した貴族はたいていがこのグループに分類されると思います。もちろん貴族以外もいたでしょうが。

 なんとなく想像できると思いますが、この頃から反革命に転じる人も増えます。初期に革命を主導した層なのでややこしいですね。
代表的な人物はラ・ファイエット。

※なお、貴族でありながら旧来の身分制度に否定的な人々は自由主義(的)貴族とも呼ばれます。
ちなみに立憲君主制はフランス革命からおよそ100年前、1688年の名誉革命によりイギリスで確立されました。ついでに覚えておくと便利です。

 一方、廃止したいと考える人々は共和派と呼ばれます。
さらにその中でも、現在の地位をそのまま残したいと考える者と、より体制改革を望む者とで、穏健共和派、急進共和派と分かれていました。

 富裕層は身分制による制限や、貴族たちへ奪われていたお金の流れが無くなれば満足。
物価高騰に苦しむ庶民は生活が楽になるまで富の再分配をして欲しい。

というイメージです。かなり大雑把ですが。
貧しい人々は革命の恩恵をあまり(ほとんど?)受けず、貴族と妥協的な議会への失望などから、その分過激な急進共和派になったりしたようです。


 ではこの頃の世論はというと、これまで革命を主導してきた立憲君主派に近いものでした。

 ところがある時、それを一変させる大事件が勃発します。

 革命への危機感を募らせたルイ16世一家が、マリーアントワネット王妃の兄が治めるオーストリアへの亡命を企てます。
これが有名なヴァレンヌ逃亡事件ですね。
もちろん突発的に逃げた訳ではありません。国外の亡命貴族や他国の力を借りて国内を鎮圧しようとしたのです。

 しかし結果はご存知の通り失敗。これが明るみに出ると、当然世論はルイ16世の王位剥奪に傾きました。

 ジャコバン・クラブでも、立憲君主派(主流派)は共和主義者が勢いづいたクラブを脱退し、ラ・ファイエットらと合流、後にフイヤン・クラブと呼ばれる団体を結成します。
(ただし、これはあくまで政治クラブの話ですから議会の構成は変わりません。)

 議会でも、彼らは「国王は逃げたのではなく誘拐されたのだ」というあからさまな嘘で国王を擁護(というか市民を沈静化させようと)しました。


 しかし、もうひとつ大きな出来事が起こります。シャン・ド・マルスの虐殺です。

 これはヴァレンヌ事件の直後、王と立憲君主派の議会を変更するよう請願する5万ものデモ集団に向け、パリの国民衛兵が無警告で発砲、殺傷したという事件です。
デモ隊は(兵隊が現れるまでは)これまでの事件とは異なり非暴力的な行進でしたので、事件は大きく報じられました。
そして最悪な事に、衛兵隊の総司令官は以前述べた通り、立憲君主派の代表格であり、市民にも人気の高かったラ・ファイエットだったのです。

 もっとも威嚇射撃に驚いた民衆がパニックを起こしただけという可能性もあるそうですが、当時の人々にはそんなことを知る由もありません。
重要なのは、王家に加え、これまでの革命を主導してきたメンバーおよびパリ自治政府に対し、民衆が敵対し始めたということです。


 一方、ヴァレンヌ逃亡事件の報はオーストリアにも届いていました。
妹家族(フランス国王一家)の身を案じたオーストリア王は、プロイセン王国とのポーランド分割会議(この辺、プロイセンの歴史の記事に通じますね。懐かしい・・)の際、外交的圧力をかけるべく共同でピルニッツ宣言というものを出しました。

 簡単に言えば「フランス国王を自由にする為に軍事行動を起こす」という内容でしたが、実際は両国ともそんな準備は無く、脅しに過ぎなかったようです。

 しかし、他国の助力や内乱を画策していた亡命貴族はこれに乗じて「早く革命を止めないとお前たちを(他国が)攻め滅ぼすぞ!」と口撃します。
が、それで鎮静化する訳もなく。
むしろ危機感と諸外国への敵対心を煽られ、国内世論は過激さを増していきました。


 それを抑えるためかどうかはともあれ、この時期、ずっと準備されてきた憲法がようやく出来上がります。これが1791年憲法です。 

 内容としては前回記載した人権宣言の具体化ですが、君主制の存続、国王への行政権の付与が定められています。
そして何より、財産によって選挙権を区別する制限選挙が規定されるなど、貧困層を政治から切り離す内容でした。前述のフイヤン・クラブ派の意図が反映されているのが特徴ですね。


 それでも憲法は憲法ですし、内心はどうあれ国王も宣誓したので、国民議会はその役目を終えたことになります。「憲法制定」国民議会ですからね。

 そんなわけで議会は解散。代わりに憲法に規定された立法議会、正式名称「立法国民議会」が選挙によって結成されました。
規定により前議員は立候補できなかった為、ここで議会の構成員は全員変わります。

 主流派はまだ根強い地盤を持っている(もしくは選挙規定の関係で有利な)フイヤン派のメンバーが大半。
ただし、王政に不満を持っているジャコバン・クラブ(現在の主流は穏健共和派)も結構な数で在席しています。
ちなみにこのとき、議場において立憲君主派が右、急進共和派が左端に座ったことから、既存の体制に賛同する人を右翼、否定する人を左翼と呼ぶようになりました。どちらも死語ですけど。

 この後、落ち着いた時期をほんの数ヶ月だけ挟み、革命は更なる急展開を迎えることになるのでした。


 とりあえず、今回はここまでです。
それでは。

2024年1月8日月曜日

明けまして。

 どうも。新年早々大変な事件が起きていますね。

 検索の邪魔になってはいけないので直接言及はしませんが、とりあえず僕は無事ということだけお伝えしておこうかと。

 更新停止していたフランス革命の概要についてもあらかた書き終わったので少しずつ投下していきたいと思います。

 それでは、今年もよろしくお願いいたします。

2023年7月23日日曜日

フランス革命の流れ(その1・ヴェルサイユ行進まで)

(※以前の記事があまりにも冗長だったため色々修正・省略しました。)

 どうも。

 皆さん、歴史の選択は日本史と世界史どちらでしたか?僕は世界史だったのですが、恥ずかしながらフランス革命の内容はほぼ理解できないままテストをやり過ごしていました。
が、最近少し再勉強してみたので、忘れる前に備忘的に並べ立てていきたいと思います。

 当然ですが内容の正確性は保証できないので、真面目に勉強したい方は教科書などと見比べながらにして下さい。そんなことするくらいなら教科書だけ読んだ方が

 ※基本的にはWikipediaの内容が大部分です。ただコピペではあまりに芸が無いので出来る限り平易かつ自分の言葉で解説させて頂こうかと思います。


 まずは予備知識から。

 時代は太陽王ルイ14世の二代後、ルイ16世の治世です。

 当時のフランスにはアンシャン・レジーム(旧体制)と呼ばれる身分制度があり、第一身分の聖職者、第二身分の貴族、そしてそれ以外の第三身分と分かれていました。
ただし、それぞれの身分ごとに貧富や立場は大きく異なっています。
例えば第一身分なら中央の大司教⇔村の教会の司祭、
第二身分なら王にコネのある宮廷貴族⇔それ以外(特に平民上がりの貴族)、
第三身分なら王室の御用商人⇔一般市民、地方では地主⇔小作農、
でスタンスが違うのはイメージできるかと思います。

 特に今回活躍する第三身分の人々は、特権を持たない新興のお金持ち(ブルジョワジー)であって、イメージしやすい貧乏な民衆とは違うということに注意してください。

 それはさておき、第一・第二身分には免税や課税の特権が認められており、当然第三身分が国費を負担させられていました。
更に当時のフランス政府の財政は最悪で、アメリカ独立戦争などの戦費に加え、凶作、そして宮廷貴族の奢侈な生活が重なり、国庫が底をつきそうな状態。

 国王ルイ16世は財政建て直しのため、評判の良い在野の経済家を大臣に任命しますが、
もはや第三身分だけでは賄えないからと特権身分への課税を試みたために、王に近い宮廷貴族たちの猛反対に遭い、罷免される…という流れが何度か続きます。
とはいえ、ルイ16世も別に課税に積極的だった訳ではないようです。


 では、いよいよ説明に入ります。

 発端となったのはある改革派大臣が課税案を貴族たちに提案した際、彼らが拒否する口実として「三部会」の開催を主張したことでした。
この三部会というのはその名の通り、各地の選挙区から選ばれた各身分の代表者で議論を行うための議会です。

 これに喜んだのが第三身分。何故なら彼らが政治に干渉できる機会はこれぐらいであり、しかも絶対王政以来170年ほども開催されていなかったからです。
彼らはこの機会を利用して、特権階級も逆らえない法律、つまり憲法の制定を成し遂げようとしたのでした。

 大臣はそれらの貴族たちと争い、王権を利用して追放したりしたのですが、
曲がりなりにも三部会を開こうと主張している彼らを追放したことで民衆が暴動を起こしたりしています。ややこしいですね。
この時の構図を描くとだいたいこんな感じ(だと思います)。

王の権力を利用する貴族と、王から権力を奪いたい貴族がいたイメージです(実際はもっと複雑ですが)。
平安風なのは気にしないで下さい。

 最終的には混乱と国庫の枯渇という現実を前に、国王も開催を認めました。(王権の譲歩。)
またこの間も大臣は何度か交代しており、最後に着任した人物は民衆の人気が高く、それを武器に三部会で課税改革を進めようと考えていました。

 ところがというか案の定というか、招集された三部会はもめにもめます。ひと月ほど会議が開かれることもないまま膠着し、やがて第三身分の代表者たちは独自に「国民議会」という議会の結成を(一方的に)宣言し、他の身分の代表者たちに合流を要求しました。

 そんなもん誰が聞くねん、と思いきや、第二身分のごく少数、そして第一身分の大半が合流を決定します。
理由はさまざまでしょうが、聖職者代表に関しては前述の通り貧乏祭司なども多く含まれていたことが大きかったようです。

 国王ルイ16世と宮廷貴族はもちろんその存在を認めず、武力で威圧しつつ議場を閉鎖しますが、彼らの決意は固く、一週間ほどで上述の他身分が合流。
国王はやむなく国民議会の成立を認め、残りの代表にも合流を呼び掛けたのでした。

 これで正式に議会となった国民議会は、この後「憲法制定国民議会(立憲議会)」と改称します。


 ただし、それで引き下がった訳ではありません。まず軍隊を動かし、議会を威圧すると同時に中心都市パリににらみを効かせます。
さらに前述の財務大臣を解任。人気の高い彼を下ろしたことで、改革勢力に動揺が広がりました。

 これに対し、「武力で潰される」と思った市民も自衛組織(※ブルジョア)を立ち上げるなどし、武力衝突と暴動が発生し始めます。

その過程で発生したのが、武装のための弾薬を求めた民衆(※非ブルジョア)によるバスティーユ牢獄襲撃事件でした。
これは専制政治の象徴とも言える牢獄で、国王の命令さえあれば誰でも・非公開で投獄できるというなかなかに怪しげな施設でした。ただし、襲撃時に収監されていたのはわずか7人だったとか。

 当初は民衆も代表者を立てて、守備隊もそれを招き入れて対談するなど冷静な交渉だったのですが、やがてそれらは暴動となってしまいます。
本来ならば成功するはずもないように思うのですが、賃金の未払いなどが祟り国王軍は救援に動けないばかりか一部が市民側に寝返り、陥落。

 これにより軍事的にも統治能力を失っていることを露呈したルイ16世は、パリ自治政府、前述の(国王軍が寝返った)自衛組織=国民衛兵、そして彼らの三色旗を正式に承認・受容するなど、専制君主制は完全に崩壊しました。

 財務大臣も復帰し、特権身分への課税などの改革がついに始動。これまでの報復を恐れた貴族たちは国外へ亡命し、今後は反革命勢力として陰に陽に活動していきます。


 また、地方ではこれらのニュースに触発された反乱や、逆に領主による弾圧といった混乱が広がりました。
ただ、これには立憲議会も困ります。彼らは別に国家騒乱を望んでいる訳ではありませんので。
しかし、市民の支持を考えれば国王軍や私兵などを利用した強硬な鎮圧はできません。

 ここで差し当たり貴族たちと第三身分代表との利害は一致し、とりあえず封建特権の一部廃止を宣言することで国を落ち着かせるとともに、かの有名な人権宣言が出されました。起草者はアメリカ独立戦争でワシントンと共に戦った「両大陸の英雄」ラ・ファイエットです。ちなみに、彼は国民衛兵の最高司令官にも任命されています。

 その内容は自由と平等、人民主権、法の下の平等、三権分立、所有権など、今の日本国憲法の基礎をなす概念が目白押しです。ここテスト出るぞー。


 さて、これで治安が戻るかと思いきや、そうも行きません。
国王ルイ16世は、特権の廃止も人権宣言も承認しませんでした。つまり未発効のままです。

 2か月後、食料品の値上がり・宮廷の散財や革命の侮辱(を伝える記事)・革命急進派の運動などによって、パリの女性たちを中心とした集団がヴェルサイユに向けて出発しました。これがヴェルサイユ行進です。
離れた場所で裕福に暮らす国王に、自分たちの生活苦を分かってもらおうとした訳ですね。また、アントワネット王妃などのいわゆる「君側の奸」を排除しようとする人もいたようです。
ここでひとつ豆知識として、宮殿と立憲議会はパリではなくヴェルサイユにありました。両者は20kmと、意外と離れています。5~7時間くらいかかったでしょう。

 宮殿の外を殺気立った集団に取り囲まれ、国王はやむなく彼らの代表と面会。特権廃止と人権宣言を承認しました。

 ところがそれだけでは終わらず、その日の未明、衛兵の目を盗んだ暴徒が宮殿敷地に侵入・近衛兵を殺害しました。戦闘音に気付いた他の民衆もまた雪崩れ込みます。
興奮状態の彼らに取り囲まれたバルコニーの上で、王と王妃は求められるままに「パリ行き」を受け入れざるを得ませんでした。

 ただし、この段階ではどちらも万歳の声で迎えられており、まだ国民の憎悪はそこまででも無かったようです。
アントワネットなどは寝室まで踏み込まれてますが、「実際に見たらそんなに悪人でもないかもなあ」くらいの印象だったのでしょうか?

 これにより、国王は味方のほとんどいないパリに連れて行かれてしまいました。
加えて立憲議会も同様にパリへと移され、市民の監視下に置かれることになります。


 とりあえず、今回はこんなところですね。
それでは。

 

2023年2月23日木曜日

奇ゲー「プラネットライカ」のストーリーなど

  どうも。前回に引き続き奇ゲーのご紹介です。と言っても未プレイなんですが。

 今回は「プラネットライカ」というプレステのゲーム。

AMAZONより。ロケットが切れているのはこういうデザインです。

 こちら、同じく奇ゲーとして名高い「クーロンズゲート」の開発元によって企画されたロールプレイングゲームなのですが、その評価はと言えば、
ストーリーが曖昧ではっきり説明されない、
しかも物語の根幹に主人公のトラウマが深く関わっており回想と現在とに話が飛びまくる、
そもそもキャラの台詞が独特過ぎて会話の大半が意味不明…。

 と、正直なところ高評価ばかりとは言えません。かくいう自分も、初めて見た時は「訳わからん」以外の感想が出てきませんでした。


 ですが、夢の中のようなセンチメンタルかつダークな雰囲気、
見え隠れする奥深い設定、特徴的なキャラクター達に魅せられた人達がいるのも事実。

 そんな訳で、今回はちょっとばかしストーリー、用語、キャラクターの簡単な説明をしたいと思います。



〇あらすじ


 まずは例によってあらすじから。
 舞台は近未来。かつて人類は火星人と接触し、友好の証として自らの顔を火星人に譲り渡す「顔の契約」を結び、それ以来人類はみな犬の顔になりました。(ついでに尻尾も生えました)
 しかし火星人は顔を手に入れた事が祟ったのか、程なく滅亡。契約の証拠として火星人がかれらの母星に残した人面岩「ザ・フェイス」だけが、ただひとつ現存する人の顔となってしまいます。

火星の人面岩
一時期話題になった、火星地表の人面(に見える)岩。(wikipediaより)
(NASA/JPL/University of ArizonaUser:Anton (rp) 2005 - Image:Martian face viking.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=75311による)

 やがて火星は罪人の流刑地として利用されるようになり、さらに時を経て彼らがコロニーを築いたところで、話は始まります。


 火星はいま、再始動した地球化計画の舞台となっていました。
しかし火星は、邪念を引き起こし妄想をかきたてる「イーブルマインド」と呼ばれる邪気を秘めています。
また10年前の計画の際に送り込まれた先遣隊は、隊長ガリル大佐の
『神は死んだ、光の私』
というメッセージを最後に音信不通に陥り、それ以来化物や終末の噂が出回っていました。

 そんな状況下で、主人公ライカを含む調査団(たった4人ですが)は火星が安全であるという報告を上げる為、火星へと向かうよう命じられます。

 そして、クリスマスを迎える頃。火星に着陸しようとしたロケットは、さっそくイーブルマインドの洗礼を受けようとしていたのでした・・・。



 どうでしょうか?「顔の契約」や「クリスマス」という言葉の響き、なんだかワクワクしませんか?ちなみに、ここまではまだ非常に分かりやすい部分です。




〇登場人物


・ライカ

 このゲームの主人公で、宇宙航空隊の新人無線技士です。

 普段は自他共に「ライカ」で通していますが、これはニックネームです。
本名はプレイヤーが入力した名前になるものの、ロシアっぽく語尾に「~ノフ」が付くので、意識しない限り変な名前になってしまいます。イチロウノフとか。

 作中でも特に寡黙な人物として描かれており、「はい/いいえ」みたいな選択肢くらいしか喋りません。古風なRPG的主人公ですね。

 そして最大の特徴が、3人の人格を持つ多重人格者であるという点。
ゲーム中はこの人格を切り替えながら進めていくことになります。(後述)


 ちなみに、キャラクター名の由来は多分宇宙犬ライカでしょうね。詳しく知らない人の為に簡単に説明すると、実験の為に宇宙に打ち上げられたソ連のワンちゃんです。クドリャフカという名前の方が有名らしいです。

・タトラー

 宇宙船の船長であり、調査団のリーダーです。
 最も年配なのですが、ちょっとした事でイライラするような言動が多いです。責任感の裏返しですかね。


・ヌーン

 ロケットの機関士で、粗暴かつ陰険な言動の目立つ古参隊員です。
 イーブルマインドの影響も隊内で最も顕著です。洋画でよくいるいじめっ子って感じですね。
ただ、着陸後の調査でも重要な案内役を任されており、結構実務では重宝な人物かもしれません。


・エイプリル

 若き地質学者にして、本作のヒロインです。優しい。
 犬の顔という難しい造形にも関わらず、当時としてみればかなり美人なグラフィックだと思います。


・ガリル大佐

 10年前に音信不通となった先遣隊のリーダーです。現在の生死は不明。
物語の謎に深く関わっているようです。


・コロニーの人々

 現在の火星の住人です。その出自は流刑者および密航者たち。コロニーも元刑務所です。
「酸素屋」ヘロデらを中心に、恐らく独力でコロニーを営むタフな人々です。
地球化計画の上では重要な存在ですが、その過去から地球人、特にライカ達のような刑務官・警察官を想起させる制服を着た存在には敵対的です。



〇三悪

 イーブルマインドが引き起こす邪念には3種類あり、それぞれ
力悪・アニマル系
知悪・サイコ系
欲悪・ビジュアル系
と呼ばれます。
 当然ながら、火星の住人はみなこのいずれかの悪に支配されています。


 そして多重人格者であるライカの人格もまたこの三悪に対応しており、ひとつの邪念が溜まり続けるとそれぞれの人格が表に現れる(顔、髪色、体格まで変化します)「人格変容」を引き起こします。
 ちなみに、ライカはこれらの人格については全く知らないようです。


・アニマル系

 思い通りにならないと力に訴える、直情的で暴力的な悪です。
 主に酒場『ナイトプラネット』に出入りする住民がこの悪に支配されています。

 対応する人格は「アーネスト」。
彼が表出すると髪が赤く変色し、体格も筋骨隆々として特定の障害物を破壊できるようになります。やはり荒っぽい性格ではあるものの、そこまで野蛮ではないという印象です。
これは他の人格も同様で、どの人格も住民ほどには歪んではいません。っていうか同レベルだったら話が進まない。

・サイコ系

 自らの知性に酔い、思想・・・というか妄想の正しさを妄信し、理解を示さない他者を蔑む悪です。
 主に金星人に救済を求める『サイコハウス』の人々がこの悪に支配されています。イメージとしてはカルト信仰ですかね。
個人的には三悪の中で最も会話の内容が支離滅裂だと感じます。会話というより自問自答か演説に近く、質問にも一人で納得したり考えたりするばかりでまともな受け答えは期待できません。

 対応する人格は「スペーサー」。
青髪で猫背の人格です。火星人が残した扉を通れるという特長を持ちます。
また意外と社交性が高く、知能も高いので何言ってるか分からんサイコ系住民からも情報収集を行えたりします。
 三人格の司令塔でもあり、ライカが見聞きした事もよく記憶しています(他の人格は断片的にしか認識できないようです)ので、ストーリー上の役割も比較的大きいです。


・ビジュアル系

 外見(ヴィジュアル)=美しさに固執し、整形を繰り返す悪です。
 それって悪なの?と思われるかと思います(ゲーム中でも突っ込まれます)が、要は虚栄心ということのようです。
作った顔の名前も『ヴァニティ(虚栄・うぬぼれ)フェイス』ですし。

 また、少なくとも火星においては「美=人の顔・醜=犬顔」を意味します。
そして同時に火星人滅亡の原因となった人の顔は禁忌ともされているらしいので、背徳的な誘惑に走ってしまった人々、という事でしょうか。
 しかも、それ程までに外見にこだわっているにも関わらず、(むしろだからこそ?)ビジュアル系住民は特に鏡を嫌うという傾向にあるようです。
自分のうぬぼれを壊さない為に真実から目を背けていると考えると、確かに不健全ではありますね。

 とは言え、火星に鏡が極端に少ないことや、作中の会話の雰囲気から、犬顔を嫌っているのはビジュアル系だけはないように感じます。整形に及ぶのがビジュアル系というだけで。

 さておき、そんな禁じられた手術を行う整形屋『リャンハウス』に出入りする住民がこの悪に支配されています。

 対応する人格は「ヨランダ」。
金髪の女性人格です。ハッキリと物を言う姉御肌という感じの人物です。
ゲーム的特徴としては、謎の人物があちこちに残したメッセージ(顔?)を受信することができるという能力を持ちます。


※人格変容のルール
 前述の通り、主人公ライカは住民達と接触する度に悪が溜まっていき、やがて人格変容が発生します。
 が、その溜まり方がちょっと素直じゃありません。

 アニマル系住民と会話→サイコ系悪が溜まる
 サイコ系住民と会話→ビジュアル系悪が溜まる
 ビジュアル系住民と会話→アニマル系悪が溜まる
 …と言う風に、三すくみの要領で悪が溜まるのです。




〇終末と5つの預言(若干ネタバレあり)


 おお、何かファンタジックな見出し。

 前述の通り、火星には終末的雰囲気が蔓延しています。
火星の人々は酒に溺れたり、金星人に救いを求めたり、整形によって自信を付けたりする事で精神を安定させています。

 その元凶ともいえるのが、先遣隊の生き残り「メディスンマン」達から教えてもらえる『黒い騎士の噂』と『エレミヤの預言』です。

 初めに聞かされるのは、前者の
「黒い騎士が各地で悪を集めており、それが完全な悪となったとき、世界が終わる」という火星で広まっている噂についてです。

 しかしその後、流刑者エレミヤが残したという
「完全なる善と完全なる悪が出会うとき、世界は再生される」という5つの預言と共に、
黒い騎士もこの預言の一部だと教えられるのです。

 ひとまず成り行き上、この預言を集めていくことが当面の目的となっていきます。

 ところで、エレミヤだとか預言だとか終末の騎士だとか、かなりキリスト教に関連するワードが出て来ている事にお気付きかと思われます。
考えてみればクリスマスもそうですね。

 キリスト教に詳しければもっとより深くストーリーを理解できるのかもしれません。




 とりあえず、今回はこんなところですね。
 それでは。

2022年8月6日土曜日

奇ゲー「ガラージュ」のストーリーなど

 よくブログとか実況で唐突に上げなくなる人いるじゃないですか。あれ何かモヤモヤしますよね、消息不明みたいな感じでハッキリしないっていうか。


 まあ僕のことなんですが。

 という訳でお久しぶりです。


 最近「garage(ガラージュ)」というゲームをやってまして、東脳の時みたく備忘がてらあらすじをまとめたいなと思いまして久々にログインしました。

 ガラージュの最大の魅力は何と言ってもその雰囲気。カラカラ、プシューといった音や錆び錆びの金属、淀み切った水、至る所に貼られた看板。数十年前の時代をほうふつとさせる閉塞感のある雰囲気はかなりイイです。

 が、このゲーム、開始直後から固有名詞が矢継ぎ早に繰り出されるので初見だとストーリーが掴みにくいと思うんです。

 もちろん、よく分からないまま彷徨うのも、その内に曖昧な認識がはっきりとしてくる感動も楽しさのひとつではありますが、あまりにもわからん状態だとモチベーションが上がらない、という人もいるかと思います。

 てな訳で、あまりネタバレにならない程度にあらすじと用語説明をしていきます。


あらすじ

 まずは公式playstoreの説明より。

精神治療装置ガラージュにかけられた主人公は奇怪な世界に放り込まれ、そこからの脱出を目指す。

「ガラージュ」この奇妙な装置は被験者の深層意識に働きかけ奇怪な暗闇の世界を作り出すのだと言われている。

主人公が放り込まれたのは、崩れそうな木造建築物と 錆びた金属とあらゆる場所が汚水で満たされた閉ざされた空間であった。 

そして自分自身の体も機械とも生物ともつかないものに変わり果てているのを発見する。

複雑な構造の迷路のようなこの世界を主人公は彷徨う。

この世界の出口を求めて―。


 つまり、ゲーム中に出てくる世界、登場人物、道具などは全て被験者の精神から生み出されたものという事でしょう。

 そしてオープニングムービー。医師と思われる人物の発言からその被験者の名前が「ヤン」らしいこと、ヤン氏は「ウンドウグツ」に何らかの執着があるらしいことがほのめかされます。

 で、ゲーム開始直後の画面がこちら。

 ドギャァァァン
 「なにこれ?え、これ俺?マジ?」となる事うけあいの衝撃ビジュアル。知っていても一瞬ビクッとなります。

 さておき、自分あての手紙や近くに貼られたメモから、

自分は「汚水」から「シェン」という人物(機械)によって助け出されたらしいということ。

この世界から抜け出すには「カゲ」を見つけなければならないこと。

そのカゲに会うためには「プシケ」という人物が手掛かりになるかもしれないということ。

などなどの情報を得られます。

 そこでプレイヤーもまたシェンの後を追い、プシケなる人物を求めてガラージュ世界へと足を踏み出すのでした。


用語

 あらすじで分かる通り、このゲームの固有名詞はかなり多いです。といってもじき慣れますが、まずは重要なものを説明しましょう。

燃料(fuel)と順応度(ego)

 どちらかが0になれば「解体」つまり死亡、ゲームオーバーです。それぞれ「白瓦斯屋」「順応堂」という施設で回復することができます。

 燃料の白瓦斯は尽きるまで悪影響が無いのですが、順応度の方は減ると会話ができなくなり(オトヌケ)、もっと減ると記録がつけられなくなる(ウデヌケ)といった支障が生じますので早めに回復しましょう。

 ただ、完全版(アプリ版)ではオートセーブなのでそこまでの痛手ではありませんが。どちらかというとオトヌケの方が厄介です。ストーリーが進まなくなるので。

 燃料はともかく、順応度ってなに?と思われる方は多いと思いますが、「自我」とか「正気度」くらいに捉えればとりあえずOKです。残念ながらギムノン(順応堂の店主)以上の説明ができる気がしないので詳しくは彼に訊いて下さい。


メーター

 右上についている目盛りです。ガラージュ世界では、このメーターの「針の位置」と「何周目か」が時間の基準となります。

 住人のスケジュールも全てこのメーターに従っている為、あちこち移動するような機械でも、メーターを見ればその居場所を把握する事が可能です。(いつどこにいるかを覚えていればの話ですが)


雄機械と雌機械

 このゲームに出て来る機械にはなんと性別があります。

 雄機械は燃料タンクと大きなエンジンによって遠出や力仕事が可能ですが、自分で白瓦斯を生産する事は出来ません。主人公はじめ、作中の機械の大半が雄機械です。

 雌機械は蟹や蛙を発酵させて白瓦斯を精製する装置を備えていますが、その分運動性能は劣ります。中には雄機械と夫婦のように暮らしている者もいますが、作中に出て来る雌機械の半数近くは白瓦斯屋で働いています。


ビンドウ

 水棲「機械」のうち、蟹を捕らえるための罠です。蟹は同じく水棲機械である蛙の釣り餌にもなります。

 蟹や蛙は交換所で売れるほか、蛙釣りは雄機械たちのメジャーな娯楽のひとつとなっています。ただ、最初のうちは出力不足であまり楽しめませんので、小さなエサと針で改造資金をちびちび稼ぎましょう。


ガラージュ世界

 ガラージュMAPは「汚水」「施設」「軌道」の三つに区分する事ができます。

汚水

 ガラージュ世界のほとんどを占めるのが汚水です。その正体は雌機械が白瓦斯を生産した後の搾りカス。しかしこの汚水がなければ蟹や蛙などの水棲機械が生息できません。すなわち白瓦斯の枯渇、ひいては全滅に繋がる訳ですから、かなり重要な要素のひとつですね。


施設

 「崩れそうな木造建築物」とは言え、このゲームの施設は意外とバラエティ豊かです。折角なのでいくつか紹介していきましょう。

●白瓦斯屋

 雌機械から白瓦斯を補給できる、言わばガソリンスタンド。この世界での通貨となっている「白瓦斯屋スタンプ」という名称からもこの施設の重要性が伺えます。

●順応堂

 順応度を回復できる場所です。

 順応液に全身を浸す「順応器」と、メリーゴーランドのような「木馬」という二種類の装置を備えています。木馬の方がお高めですが、効果は多分同じです。

 アドバイスとして、冷却室はマメに覗きましょう。システム上いつも無人に見えますが、実は中で住人が涼んでいる、という事も多いです。

●マルヤ百貨店

 ひときわ目を引く中心的建物。と言っても売っているのは薬・パーツ・釣り具・雑貨といった程度ですが、それでも作中で指折りの巨大建築です。

●工場

 目盛りや配管がひしめく、独特な雰囲気のある建物です。ただしゲーム開始時点では入れません。

 ちなみにトップ画面の配管だらけの場所はこのマップです。

●清流荘・福寿荘

 一風変わった名前のこれらはいずれもアパートです。二つの建物は二階で繋がっていたのですが、福寿荘のエレベーターが故障しており通り抜け不可。

 清流荘には工場および百貨店で働く機械が住んでおり、決まりきったタイムテーブルで職場と部屋とを行き来しています。部屋の前にはメーターのようなものがついていますので一目瞭然です。

 地味に広いのでうかつに入ると燃料や順応度が尽きて死にます。


軌道

 そして汚水を越えて場所と場所を結ぶのがこの軌道。台車で進む機械はレールが敷かれている場所しか進めませんので、大袈裟に言えばこれがガラージュ世界の範囲を決めている、とも言えます。

 ただしこの軌道(の、少なくとも一部)はここの住人によって敷設されたものです。頑張れば拡張できるのですね。

 ゲーム中、たとえ建物が続いていそうでも気になる場所があっても、軌道が無ければどうやっても進めません。この「行けない範囲」が逆に想像を膨らませるのかも。


 また、外周・内周と呼ばれる二重の環状レールですが、ゲーム開始時にはプレス機によってかなりの区域が封鎖されてしまっています。タイミングを計ってすり抜けようとしてもムダですからプレス機を止める方法を探しましょう。

 あとは外周・内周で視点の向きが変わりますので、慣れないうちは迷いやすいのでご注意を。コツは看板をよく見て、自分の進みたい方角がどちらかを考える事です。


似ている名前

 薄々感じているとは思いますが、このゲームに出てくる人名は中華風・和風・洋風エスニックと分かれています。

 特に重要な人名を間違えるとわけわからんことになりますので、重要人物「ヤン」絡みで似ている名前を挙げてみましょう。

●シャン

 白瓦斯屋で働いている雌機械のひとり。

 三人娘の中では一番顔がこわくない(個人的感想)。

●チェン

 廃墟区域に入り浸っているやさぐれ機械。

 ヤンと関係があるのがまたややこしい。

●シェン

 主人公の恩人。見ず知らずの主人公に家を明け渡しちゃうちょっと不用心な人。

 余談ですがゲーム開始当初、明らかに他人の家なのにいきなり「自室」と呼ぶ主人公はどうかしてると思ってました。

●ハン

 既に閉鎖された印刷所のおやじ。

 珍しい一つ目。


その他、紛らわしい名前

●アーサン・ターサン・ハーサン

 工場で働いている三人組。名前は非常に似てますが、間違えても特に問題はないです。

●ちよ・ツル

 ちよは福寿荘の住人(おかみさん?)。ツルは宮という機械の奥さん。古風な二文字の名前というだけですがよく間違えました。


 このゲームが放つものすごい雰囲気と世界設定のあまり、プレイ中は目先のイベントに気を取られ、ついついどんな謎を追っているか忘れがちになりますよね。僕がアホとかそういうあれじゃなくてね。ね。

 そこで、メモ的に最序盤で登場する謎を整理しました。

ガラージュの「過去」

 ゲーム開始直後から分かる事ですが、作中の世界は「何かがあった後」の世界です。それも、誰しもが巻き込まれるほどの大事件が。

 少し気にかけてみると、ふとした会話からでもその巨大な騒動の余波を伺う事ができます。

 まあ精神治療装置の世界なのですから、治療の必要を生む何かがあった、というのは考えてみれば当然ですね。

 「事件→ガラージュ起動→ガラージュ世界生成」という時系列を考えれば、何かがあったという「設定」と呼ぶべきかもしれません。

 まあこの世界を舞台とする限り、プレイヤーにはどちらでも同じことですが。


ヤン

 言うまでもなく、オープニングで出てきたガラージュの被験者ですね。

 そしてゲーム内では、ハジメという機械からプシケと仲の良い、白瓦斯屋のあるじとしてその名前が出てきます。

 ところが、白瓦斯屋を訪ねてみても会えるのはウリブールという別人。もちろん「ヤン・ウリブール」とかいう名前ではなく、全くの別人です。

 ここでプレイヤーの頭には、

 他にヤンがいるならば、ヤンの精神世界であるこのガラージュ世界は彼のものなのか。とすれば、自分が操作しているこの機械は何者なのか。

 そして、ヤンはどこで何をしているのか。いきなり放り出された主人公と違い、白瓦斯屋の店主という役割を与えられているのは何故なのか。

 といった疑問が浮かぶことでしょう。

 なお、僕は開始数秒で名前を忘れていたので全く気付きませんでした。


カゲ

 あとは、カゲというのも謎ですね。

 なぜカゲと出会えばこの世界から脱出できるのか、そもそもカゲとはどういった存在なのかも分かりません。

 ただ、シェンもまた自分のカゲを探している以上、カゲがあるのは自分だけではないらしいと分かります。

 しかしガラージュ世界はヤンの精神世界。つまりヤン以外に脱出経路、メタ的に言えばNPCにクリア方法が用意されている訳はありませんが……。

 といった疑問が生じますね。

 こちらもプレイ中は全く疑問に思いませんでしたが。


 とりあえず、今回はここまでです。久々に長文を書いたら疲れました。


 それでは。