2018年4月22日日曜日

『将軍の栄光』作戦元ネタ解説(第六回・群狼作戦)

 お久しぶりです。
今回の元ネタ解説は「群狼作戦」(西部戦線・枢軸側『群狼作戦』)についてしようかと思ったのですが、
後述しますがこの「群狼作戦」とは「どこどこを制圧せよ」みたいな作戦ではなく、むしろ戦術と言うべきものであり、解説すべき余地はあまりありません。
パスしようかとも思ったんですが、せっかくなので大戦中の海軍、とりわけUボートの動きについて解説したいと思います。
 ※基本的にはWikipediaの内容が大部分です。ただコピペではあまりに芸が無いので出来る限り平易かつ自分の言葉で解説させて頂こうかと思います。


 WW2におけるドイツ海軍の任務は、ほとんどイギリスに対する通商破壊にあったと言っても過言ではありません。
その理由は単純に、イギリスの海軍とまともに戦って勝てるはずがないからです。
イギリスはワシントン・ロンドン海軍軍縮条約で多くの超ド級戦艦艦を廃棄しましたが、それでも世界トップクラスである事には変わりなく、WW1とその戦後処理で弱体化したドイツ海軍を圧倒していました。

参考として英独の主力艦の数を比較すると、
 イギリスの主力艦(戦艦・巡洋戦艦)15隻程度に対し、
 ドイツは巡洋戦艦2隻と戦艦2隻、そして主力艦としてはやや心許ないポケット戦艦が2隻。
 ちなみにイタリアは戦艦5,6隻程度。


 もちろん撃沈・修理・就役でこれらの数は増減しますし、各戦線での分布も異なるため一概には言えませんが、全体的に見て英>>>伊>独という構図は変わりません。


そこで、 ドイツ海軍は大西洋の商船を攻撃し、イギリス海軍が撃退にやって来る前に逃げるというのが基本方針となっていました。
その中で最も活躍した艦が、通称Uボートと呼ばれる潜水艦のシリーズです。U-571という映画が有名ですね。

WW1の際、商船を無差別・無警告で攻撃する「無制限潜水艦作戦」で多大な成果と武名(もしくは悪名)を手にし、ヴェルサイユ条約で保持・生産が禁止されていましたが、ドイツは国外に作った造船会社でこっそりと(?)技術を研究しており、
1935年に一方的にヴェルサイユ条約を破棄した直後から新型の製造を開始しています。


 1939年のポーランド侵攻時には60隻ほどを所有していましたが、うち大西洋まで航行できる型はわずか20隻程度であり、補給や修理を考えると実際に戦場で働いているのは7隻程度という有様。
この状況に対し、潜水艦隊司令デーニッツ提督はイギリスを降伏させるには航行能力の高い型のものが少なくとも300隻必要だと主張していました。

しかし、予算は主力艦に回され、結局ドイツ海軍がUボートを300隻同時に運用する事はありませんでした。
実のところ、陸軍で歩兵が主力とされ戦車の機動力が軽視されたように、海軍では海上の艦艇が重視され、潜水艦は当のドイツでさえ軽んじられていたそうです。
他にも、陸上兵器を始め様々な軍備を充実させる必要性もある中で、それだけの数を揃えるのが現実的だったのか?という点も考えなければならないと思いました(感想文?)。

 最初は国際規則にのっとり、商船を攻撃する際は積み荷を臨検し乗員を避難させた上で撃沈するという面倒な手順を行っていましたが、間もなくヒトラーにより制限は緩和され、最終的には中立国の船も含め、無警告で撃沈するようなります。無制限潜水艦作戦の復活です。
当然国際法違反ですが、まあ潜水艦で一々浮上するのも非現実的ですし、何より連合軍もやってますんで。


 それらの制限にも関わらず、Uボートは1939年9月のポーランド侵攻直後から北海・東大西洋で多数の戦果を挙げており、なんと空母や戦艦すらも撃沈しています。

これに対して、イギリスは普段バラバラに行き来する商船たちを集めて1つの船団にし、軍艦が護衛する護送船団方式を取り入れます。
さらに積極的な策として哨戒専用の艦隊を編成し、Uボートの探索にあたりました。
しかし小型かつ潜水能力の高いUボートを発見するのは困難であった上、
まだ発見する可能性の高い飛行機はこの時には潜水艦を攻撃する術を持っていませんでした。
イギリス海上艦の甚だしい不足と相まって、結果としてはあまり有効な策ではなかったようです。


 そんな感じで順調に商船を沈めていたある時、Uボートに出撃禁止命令が出されます。
ノルウェー侵攻作戦、「ヴェーザー演習作戦(→元ネタ解説)」に参加するためです。

この作戦は非常に珍しい事にドイツ海軍の多くが海上輸送の護衛などに従事していましたが、Uボートもその中に加わっていたのです。
厚い氷と魚雷の不具合によってここでは大して活躍する事ができませんでしたが、ドイツの駆逐艦は10隻、巡洋艦は1隻撃沈されているのでそれに比べればマシですね。

ちなみに結果として占領に成功し、ノルウェーにはいくつかUボートや航空基地が作られました。

それよりもはるかに重要かつUボートにとって最大の幸運が訪れたのが1940年のフランス侵攻。
地図を見て頂ければ分かると思いますが、フランス西岸の港からであればわざわざイギリス本土を迂回しなくとも大西洋に進出できます。
単純な距離としても大幅に短縮され、活動時間も範囲も格段に延びました。

しかもダンケルク撤退戦などでイギリス駆逐艦は減少の一途。
ここまではUボートの勝利と言ってまず間違いないと思われます。

  そんな中で、いよいよ「群狼作戦」が導入されました。
本来は単独で活動するように想定されていたUボートでチームを編成し、偵察機が発見した船団の予測進路で待ち伏せ、包囲殲滅するというものです。
あるいはUボート自身が船団を発見したら周囲の艦を無線で呼び包囲するという戦術だとする記述もありました。

まあいずれにせよ、簡単に言えばUボートによる集団攻撃ですね。
先述の通り数の少ないイギリス護衛艦では複数のUボートに対処できず、確かな効果があったようです。


 ですがここからしばらく、Uボートの戦果は上昇と下降を行き来します。
その要因の一つがイギリスの電波兵器の開発です。
開戦以降、イギリスはレーダーを始めとする電波系の兵器の開発を熱心に進めていました。
その結果小型化したレーダーは哨戒機にも搭載され、Uボートは夜間でさえ浮上中に発見される危険が生じました。
また哨戒機にも対潜装備が備えられたので、上空にも気を配る必要が出てきます。

さらに1940年9月、アメリカはイギリスに50隻の旧式駆逐艦を貸与しています。これらは対潜装備を整え、護衛兵力に加えられていきました。
後は変わり種として商船を簡易の空母などに改造した「CAMシップ」なども登場し、この辺で本当にカツカツだったんだな・・・と感じます。


他方で、ドイツは対ソナー装備やレーダー逆探知装備、新型魚雷等の兵器の開発や群狼作戦などで対抗します。
その他照射ライトだの何だのと非常に激しい開発合戦が繰り広げられますが、難解なので省略します。


 さて、この間ドイツの海上艦艇はほぼ壊滅し、首脳部は比較的安価で製造しやすく、かつ多くの実績を重ねてきたUボートを海軍の主力と定めます。
その証拠に、ヒトラーは水上艦隊の解体を宣言した事もあるほど(後に撤回)です。最初とはえらい違い。
実は海上艦艇も実力の割には活躍しています(巡洋戦艦フッドを撃沈したビスマルクが有名ですね)が、ここでは割愛します。

そのUボートの撃沈量は、むろん技術の進歩と艦艇数自体の増加があった事もありますが、アメリカへの布告(1941年12月)後でも着実に増加しており、アメリカ沿岸でも十分に成果を挙げていました。1942年には空母も撃沈しています。


 しかし、1943年以降、その活躍は次第に落ちぶれていきます。

まず北アフリカ戦線が枢軸側の敗北で終結し、そちらに割かれていた兵力が護衛船団に加わりました。
多くの空母も加わった事で、連合側の哨戒機が大西洋を広くカバーするようになったのです。

さらに上記の開発競争ですが、連合側が完全に優位に立ちます。
レーダーは進歩を重ね、海上に突き出た潜望鏡ですら発見できるようになりました。
とはいえレーダーは大型だったので、ソナーを搭載した哨戒機と攻撃担当の哨戒機の、通称「ハンターキラー」というチームが編成されました。

頼みの群狼作戦も、潜水艦の間で行われる通信を傍受できるようになった連合側にとっては逆効果に。
もちろんソナーも進化しており、潜っていてさえもすぐ攻撃を受けるようになってしまいました。

 結局新兵器や新型Uボートもその差を覆す事ができないまま、しかし連合軍の力を少しでも対Uボートに割くために、多くのUボートが撃沈を覚悟の上で終戦まで出撃し続けていく事になります。


 さて、「将軍の栄光」での潜水艦について。
潜水艦には色々と種類があるようですが、このゲームでは水上艦艇と同様に艦隊の一部として敵艦隊と戦う、艦隊型潜水艦という種類に近いものだと思われます。
当然以上のような通商破壊に従事したUボートとは全く異なりますね。まあゲームの性質上止むを得ない事ですけど。
またなぜか戦艦や空母に大ダメージを与えられるようになっていますが、これは良く分かりません。
多分ですが、ゲームバランス的な面からそういう特性が追加されているんじゃないでしょうか。
そういえば重戦車にも意外と突撃歩兵が有効だったりしましたね。EASYTECHさんは最強のユニットが最弱ユニットの群れに弱いという仕様が好きなのかもしれません。象がアリの群れに負ける、みたいな。


 それから、この『群狼作戦』ステージですが、元ネタとなるステージを見つける事ができませんでした。
ステージに記載されている年月は1942年12月。北アフリカ戦線でトーチ作戦が行われた時期ですね。
こりゃまた架空のステージかな、解説は無しかな、と考えていましたが、Wikipediaをくまなく探してみると、トーチ作戦の欄にこんな記述が。

北アフリカ上陸の「Gymnast(体育家)」、ノルウェー上陸の「Jupiter(木星)」、北フランス上陸の「Round-up(駆り立て)」、ブレストかシェルブールへの(本格的反攻ではない)限定的上陸である「Sledgehammer(大鎚)」が検討されていた。

・・・ノルウェー上陸?これだ!多分!


 という訳で、このステージの元ネタは、トーチ作戦実行が決定される前の原案の一つ、「Jupiter(木星)作戦」だと(勝手に)認定します。
まあ検討段階で却下された作戦なので、具体案は見つかりませんでした。
ゲーム内のステージ説明によると、ノルウェー沿岸のUボート基地を破壊し、通商破壊を妨害するのがイギリス側の目的とされています。
それが実行に値するのかどうかは分かりませんが、前記の通りノルウェー沿岸にもUボート基地は作られていたので、一応辻褄は合っている・・・と思われます。

プレイ時はドイツ潜水艦隊の数が少なすぎ!とか思っていましたが、よくよく調べてみるとイギリス海軍と正面切って戦ってただけでもむしろ異常な充実っぷりと言うべきかもしれません。

正直これ以上は書く事が思い浮かびません。ですので短文になってしまったかもしれませんが、これにて失礼させて頂きます。
それでは。






5 件のコメント:

  1. 戦術だったんですか、てっきりなんかの海戦かと思ってました。
    海軍だとイタリアよりも弱いのは意外ですね。たしかに将軍の栄光内でも潜水艦の割合がかなり多いですね。ヴェーザー演習作戦なんか潜水艦しかありませんし。

    潜水艦の性能は群狼作戦の再現もあると思います。ゲーム内でも潜水艦で包囲して士気下げて集中放火する感じですし。まあ包囲する方法が隠密性活かすのから安さによる物量活かすのに変わってますが笑。

    すごい地味なとこから元ネタ発見しましたね。確かに将軍空母以外の軍艦ほとんど破壊してますし大金星ですね

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    1. あまりにも地味すぎてこれが元ネタでいいのかとも思ったのですが、時期的にJupiter作戦かなーと。

      潜水艦に関しては、実は建造コストの安さは史実通りみたいです。
      安価、短期間(特にUボート)で作れるという点も、後半にドイツで重用された理由の一つ...らしいです。
      確か提督の決断でも潜水艦はそんな感じだったような。

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    2. 「将軍の栄光 攻略」番外編・軍団モード『シベリアへの進軍』で言ってたやって欲しいゲームですが、HandyGamesって会社の第二次世界大戦が舞台の戦略ゲームが良いですね。ジャンルは同じですがシステムはかなり違い難易度が高いです

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    3. ほうほう。
      このゲームは全く知らなかったです。
      ちょっとプレイしてみましたが、結構プレイ感は違いますが面白いですね。
      しばらくやってみたいと思います。情報ありがとうございます!

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    4. ありがとうございます!

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