「東脳」重度ネタバレと若干の考察

まず始めに書いておくと、今回はガチのネタバレです。いやネタバレなんてもんではなく、モロバレ全開です。ストーリーを解き明かす喜びなんてあったもんじゃないです。
「クリア済みだから良いよ」、「未クリアだけどいいよ」、「持ってないけど手に入れたいという気持ちに変わりはないよ」という方のみご覧ください。


ここまで神経質に書いているのは製作者の佐藤理様やソニー社様に睨まれるのが怖いからです。
もう20年以上前のゲームで発売も終了していますが、念には念を入れたいわけです。


ソニーさんのゲームもイヤホンも大好きです!PS1~4、ついでにPSPも全部買いました!もちろん佐藤理さんも好きですよ!



・・・あからさまな媚売りが終わった所で、本題に進みたいと思います。






  • 背景

 まず、東脳の成り立ちから書いていきます。こちらは「東脳図絵」というステージ序盤に手に入るアイテムに記載されているのでネタバレではありませんが、書き忘れていたので。

 陰陽五行説の考えでは、世界は最初、秩序も形あるものもなく混沌としたエネルギーの塊でした。
しかし、やがてエネルギーは熱い部分と冷たい部分に分かれます。
これが「」と「」です。

陰の中でも最も冷たい部分が「」、陽の中でも最も熱い部分が「」となり、残ったエネルギーが」と「」になりました。
最後に、それぞれ余ったエネルギーが中央で集まり「」が生まれました。

五行に分かれた世界は炎や森、海や金属、山々へと姿を変えていきます。
そして世界が完成した時、最後に少しだけ余った5つの属性は最果ての島「東脳」に集い、そこに5つの国を作りました。

つまり東脳の5つの国は原初の五大属性を宿しているという訳ですね。なんかファンタジーのようです。
いやファンタジーといえばそうなんですけど。

 5つの国の王は、吸い込まれた不完全な人の魂を5つのマガタマに分け、各々の国で預かり、その地に溢れる属性の力をマガタマに注ぎ込むという事を使命としていました。
これは既に少し説明していましたね。

 しかし時が経つにつれ、王たちは属性の持つ力に目を付けます。
マガタマに力を与えるのではなく、逆に力を吸い取ってしまえば、様々な事に使えると気づいてしまったのです。
そこで話し合った王たちは、今までのように弱ってはいない、万全な人間の魂を吸い取って互いに利用するという企てを実行しようとします。

 その東脳の使命に反する企みに唯一反対したのが、正体不明となっていた中心の山「トンノウ」の主にして土の王「トウギョウ」です。
しかし4対1では敵うはずもなく、彼(彼女?)は体を8つに引き裂かれ目を奪われるという非常に残忍な方法で排されてしまいました。
その体は東脳の各地に捨てられ、土の国には厳重な封印が施されます。

 邪魔者を消した4人の王は、心置きなく罪も無い人々から魂を奪い始めます。
これが、東脳が「浄化の島」から「不浄の島」に変貌した理由です。


 しかし、さすが王というべきか、トウギョウは体をバラバラにされてもなお生きていました。
彼は残った力を振り絞り、強い心を持った人間の魂を東脳に呼び寄せます。

そうすれば、強い精神を持っているその人間は必ず魂を取り戻しにやって来るでしょう。
魂を取り戻すには4人の王からマガタマを奪い返さねばなりません。
さらに土のマガタマは、トンノウの封印のさらに内側にある強い封印の中に保管されています。

その封印を解くにはトウギョウの力が不可欠であり、そのためには各地に散らばった彼の肉体を再び集めなければなりません。
そして理由は後述しますが、その力を使えばトウギョウも封印から解放されます。
(仮に復活してもまた八つ裂きにされそうなものですが・・・)

 ですが、トウギョウの目論見は次々と失敗します。どの人間も、途中で王に殺されたり、道中で力尽きてしまったりと、九度の転生を果たす前に自分の目的を忘れてしまったようです。
そうして8回の失敗を繰り返し、トウギョウが正真正銘最後の力を使って呼び寄せた9人目の魂の持ち主こそが、本作の主人公・リンです。

 つまり、リン以下、トウギョウが呼び寄せた魂達は四行の王の仕業ではないんですね。
考えようによってはトウギョウによって殺されたようにも思えます。
ですがトウギョウにしてみれば計画を絶対に隠しておく必要があったので、
たとえ失敗しても四行の王に「吸い寄せた魂の持ち主のうちの1人が偶然魂を取り戻しにやって来た」と思わせてその目を欺くという目的があったのではないでしょうか。

 もちろん、リンが死んだ時語りかけてきた謎の声はトウギョウです。死んでも前世の記憶や持ち物を保持していたのも、転生の度にトンノウの封印を解く為に必要な札を手に入れていたのも、トウギョウが陰ながら働きかけていたのでしょう。たぶん。


 なお、実況動画を見ていると「トウギョウが呼んだリン以前の8人の人間は、リンがこれまで転生した8体の東脳生物たちのことだ」という話がありましたが、
だとするとリンはその8人が転生した生物を追体験したということでしょうかね?
それとも東脳に呼び寄せられ東脳生物となった彼らの体を、言い方は悪いですがリンが乗っ取ったという形になるのでしょうか。

確かにこれなら、こちらも後述しますが9度目の転生先がリン(しかも成長済み)なのも頷けます。何せリンの体はそのままですからね。
ですが、そもそも9度転生できなければトンノウの封印に解くのに必要な札が揃いません。
すると、それ以前の人間たちもリンと同様に9回転生するはずだったのではないか?
という点から、この話には少し疑問を感じます。まあ東脳の世界ならこれもありですよね(適当)

  • エンディング
 さて次は、このゲームのエンディングの流れを記述します。
8度の生で使命を全うしたリンが9度目に転生した生物、それは今までのように奇妙な東脳生物ではなく、人間のリン自身でした。リンは再び自分として生まれ変わったのです。


木・火・金・水のマガタマを取り戻し、転生する度に手に入れた札を使って中心の山「トンノウ」の封印を解いたとき、これまで各地で助言をくれていた線画のような生物が現れました。
彼は自分が土行の王「トウギョウ」であると述べ、リンはトウギョウから土の力を持った「剣の玉」を受け取りました。剣玉ではありません。
そして、その玉に各地に散った肉体が持った木・火・金・水の力を秘めた玉を合わせると、囚われたものを解放する力を持つ五力の剣になると教わります。
その剣が無ければ土のマガタマを取り戻す事はできないだろう、とも。
リンは、言われた通り各地を巡り4つのトウギョウの欠片に会って玉を集め、五力の剣を完成させました。

その剣を携え、八角堂「パアファン」の中に入ったリンが目にしたのは、
四行の王の石像、そしてそこから吐き出された網のようなものに捕らえられたマガタマたちでした。
石像から聞こえる王達の声をよそに、リンはその網を断ち切ります。
開放されたマガタマが飛び交う中、その内の1つがリンの元へ。
リンは自身の魂の抜け殻に5つのマガタマを戻し、晴れてリンの魂は再び五行の力に満ちた状態となったのです。

そして再び現れたトウギョウ。線画のような姿ではなく、完全に実体を持った状態です。
彼もまた剣の力によって封印を解かれ1つに戻れたのでした。
トウギョウは今までの自分の計画を話し、そしてもう東脳がこんな愚行を繰り返すことはない、とリンに約束します。

余談ですが、本作で出てくるトウギョウの肉体の欠片は5つの国で出会う5体です。
8つに裂かれたのですから、残りの3つは出てきていない事になります。
単に「八つ裂き」で語呂が良かったからという理由なのかもしれませんが、ひょっとするとそのうち2つは目玉であり、
そして最後の1つはマガタマと同じくどこか・・・恐らくはパアファンに囚われ、封じられていたのではないでしょうか。
だとすると封じられたものを解き放つ「五力の剣」がその欠片に作用したと考えれば、マガタマの網を切ったと同時にトウギョウが復活したのも納得がいきます。

また、トウギョウの欠片が「土」以外の属性の力を秘めた玉を持っていた理由としては、上で書いたように土行が他の四行から生じたからということが考えられます。
しかしそれだけではないでしょう。トウギョウは4つの国に隠されていましたが、その間に四行の力を蓄えていたようです。
ここで思い出して頂きたいのですが、東脳の本来の使命は弱った魂の欠片に五行の力を注ぎこむことでした。引き裂かれたトウギョウの体にも同様のことが起きたのだと思われます。
すなわち東脳は、自らの使命にもとる行いに、限りなく自らの使命に沿った形で終止符を打ったということになります。
使命を果たさないと報いを受ける東脳世界ですが、他の四行の王どころか、東脳それ自体でさえも例外ではなかったということですね。

ただし、これらは完全な推測となりますのでご注意ください。

そして視点は空高く昇っていき、エンドロールが流れます。きっとリンはこれから元の世界に帰り、元の生活に戻るのでしょう・・・と思ったら大間違い。リンはこの後も冒険を続けなければなりません。それが「東脳」の続編、「中天」です。東脳以上のレアゲー。
よーわからん仏像か何かの顔パーツを求めて月やら星やら太陽をぐるぐる巡るようです。よく知りませんが。

  • マガタマの使い道
次は、4人の王がマガタマをどう使っていたかについてです。

・キンギョウ(欲望の国・ユイワンの王)
 キンギョウは金のマガタマが宿す「欲望」を、自らの能力で金銀宝玉に変化させています。この財宝は他の王達にも分配されていますが、キンギョウはこっそりくすねて約束より多くの財宝を蓄えているらしいです。

まあ、「物欲」(金銭欲でも良いですが、やはり物欲の方が語感が良いのでこちらを使います)という一番ストレートな動機ですよね。欲望の王かくあるべしといった感じ。
 その蓄えた財宝は、自らの城・ロシャンを飾るためだけに用いられています。
余談ですが、この城は欲望ごとに部屋が分かれている辺り、キンギョウはコレクターっぽい性格のようです。

 あんなキテレツな世界の中で財宝が何の役に立つかは疑問な所ではありますが、なんだかんだで実は通貨もありますし。案外文明が発達しているのかもしれません。
とはいっても多分キンギョウは鑑賞専門でしょうね。


・スイギョウ(夢見の国・モンチェンの王)
 スイギョウは水のマガタマが宿す「夢」を、「夢見の目玉」を使って吸い出しその世界に入り浸っています。
取り出した夢は、宮殿の中の一室「夢見の部屋」という場所でスクリーンに映されていました。

 で、その「夢見の目玉」というのが、何を隠そうトウギョウの目玉です。
トウギョウから目を奪う前に夢の虜となっていたのか、それともその後に偶然その性質に気付いたのかは定かではありませんが、
どちらにせよスイギョウもまた欲望に囚われていた事に変わりはありません。さしづめ「睡眠欲」といった所でしょうか。そのまんまですね。


 ちなみに夢を見るのに必要な目玉は1つ。トウギョウが持つ目玉は2つです。
では残りの1つがどこにあるかというと、生命の国・ミンケンです。
モクギョウにとっては何の価値もないように思えますが、少なくともモンチェンに対する外交カードとしては最強ですから、何かの時の為にとっておいたのかもしれませんね。
結局リンが転生した生物によってモンチェンに奪われてしまいますが。


・カギョウ(時間の国・シチェンの王)
 カギョウは火のマガタマが宿す「対立」の力で、電算室を動かし、無数のロウソクの火を燃やし、東脳の生物の命運を電算室が握るシステムを作り上げました。
つまり本来シチェンには電算室は存在せず、当然灯火を消すと生物も息絶えるなどという仕組みは無かったのです。(もしかするとロウソクは元々あったのかもしれませんが)

ロウソクの火が自然に消えないのは、火のマガタマの力によるものであるからです。
だから「水」の力を豊富に含んでいると思われるモンチェンの水でなければ消えなかったのでしょうね。

 カギョウが求めていた欲望は、「名誉欲」だと思われます。
カギョウは東脳の実権を握りたかったようです。東脳のすべての生物の命運をシチェンが握る事、即ち東脳の頂点に立つという事は、彼の名誉欲を満たすに十分だったでしょう。
(カギョウは威厳のあるポーズを自分で研究しているほど自尊心の強い性格でした。)

 といっても、少なくとも名目上は電算機が自動で決定しているのですから、実際にカギョウの思いのままという訳ではなかったと思われます。
現実的に見ても、火を消そうとするなら夢見の水を有するモンチェンに頼むか忍び込むしかなく、さらに電算機へ生物を登録するのはミンケンの役割でした。
さらに、そもそも他の王がそこまで強大な権力を持つ事を許したとは思えません。

ですがそれでも、シチェンが東脳の生物の命を左右しているという事実があれば、彼には充分だったのでしょう。

 個人的な意見ですが、カギョウは電算機を使って欲望を満たしているように見えますが、実は自尊心を満たすためには電算機の命令には従わざるを得ない訳で、
そういう意味ではむしろ名誉欲を人質にとられ、電算機の奴隷になっている・・・という風にも言えるかもしれません。
使っている道具に実は支配されてるっていう辺りもSFっぽくて嫌いじゃないです。


・モクギョウ(生命の国・ミンケンの王)
 モクギョウは木のマガタマが宿す「生命」の力で、東脳生物を生み出す生命の木「ミンケシュ」をパワーアップさせました。
本来、死んだ生物の養分を使って新たな生物を生み出していたので、東脳の生物はほぼ一定に保たれていたでしょう。
しかし木のマガタマを使ったことで、以前よりはるかに多くの生物を生み出し、東脳生物の数もどんどん増えていったのだと思われます。

 モクギョウは、第一の目標としては自らの国を富ませるために生物を増やそうとしていたのでしょう。
もっとも、生まれてくるのは自分の国だけでなく他国の生物も大勢いるわけで、それだと私利私欲という面は少ない感じも受けます。
あるいは、モクギョウはミンケシュとほぼ一体化しているので、単に自分の力を強めたいだけだったのかもしれません。

 キンギョウの「物欲」、スイギョウの「睡眠欲」、カギョウの「名誉欲」のように、
モクギョウが囚われていた欲望があると強引に仮定するなら・・・やはり「性欲」でしょうね。快楽とはあまり関係ないと思いますが、一応繁殖に関わる事ですから。


  • 地名の元ネタの漢字考察

 プレイ済み・動画を視聴済みの方は、「東脳」の地名・人名が中国語をベースにしていることは恐らくお気づきの事と推察します。
そこで最後に、各国の国名・その中心的な建物名の漢字表記を考察してみました。暇つぶしにお付き合いください。お、ブログ名にかけたセリフ。

●ミンケン-生命の木ミンケシュ
命(ミン)根(ゲン)
 -命(ミン)棵(クァ)樹(シュ)、あるいは命(ミン)果(グォ)樹(シュ)

命根はほぼ確定だと自負しています。
棵とは「~本」という意味の量詞であり、「一棵樹」で「一本の木」という意味となるそうです。
だとすると命棵樹は命本の木?となって意味が通りませんので、やはり生命を果実として実らせる樹木・・・というのが適当な気がします。

●シチェン-電算室ティエン
時(シー)間(チェン)
 -電(ティエン)

そのまんま。あんまりなので灯台トンタアも追加しておくと、
灯(ドン)塔(ター)
でしょうね。やっぱりそのまんま。

●トンノウ-八角堂パアファン
東(ドン)脳(ナオ)
 -八(バア)方(ファン)

これだけは例外的に、国とは関係なく東脳という名前がそのままつけられています。
・・・ていうか、そもそも東脳ってどういう意味?

●ユイワン-さざえ城ロシャン
欲(ユイ)望(ワン)
 -饒(ラォ)城(チァン)あるいは繞(ラォ)城(チァン)

ロシャンが少し難しかったです。
饒は富む・豊かという意味で、繞はぐるぐる巻くとか回るという意味です。
さざえと名前がつくからには後者のように思えますが、ダブルミーニングなのかもしれません。

●モンチェン-夢見宮殿ピンチャオ
夢(モン)見(ジェン)
 -氷(ビン)朝(チャオ)

ピンチャオに限っては分からなかったので実況動画のコメントからそのまま引用させていただきました。
萍(ピン)草(ツァオ)(萍は浮草)も儚い夢っぽくて個人的に捨てがたいのですが、まあ氷の朝廷の方が断然しっくりきますね。

 こんなところですね。
あと、東脳の実況やプレイ動画を見たい場合、日本人のものはほとんどありませんので、ニコニコ動画よりYouTubeで検索する方がオススメです。
「tong nou」「eastern mind」で検索すると、海外のプレイヤーさんの投稿が沢山見つかりますよ。
大体の雰囲気くらいは分かりますので、手元にソフトが無い場合は選択肢としてアリだと思います。
では。

4 件のコメント:

  1. weblio日中辞典によると、中国での東の意味は方角の他に、(昔,主人は東に,客は西に位置したことから)主人,あるじとなるようです。これが正解かはわかりませんが。

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    1. コメントありがとうございます!
      なるほど・・・トンノウは中枢であり、緑頭のちょうど脳に位置するので「東脳」ということでしょうか。フムム。

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  2. 中国語翻訳:https://zhuanlan.zhihu.com/p/85812633

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  3. 「東脳」と「トンノウ」は違うものじゃないですかね
    東脳は東の果てに浮かぶ島で、すべての国が脳の部分や脳の中の記憶や映像的なものだと個人的に思っています。
    トンノウはその中の重要なところ。記憶を司る部分みたいな感じだと思ってます。あそこで色々あった結果東脳は浄化されたので、トンノウ=東脳の記憶的なやつを司る部分
    東脳=東脳そのもの

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